被災した街や企業の再建という
前人未到の業務領域に
地域密着型金融機関として尽力中。
理事長 菅原 務さん
宮城県には5つの信用金庫があって、当金庫はその1つです。営業エリアは気仙沼市を中心に登米市、南三陸町、岩手県の大船渡市や陸前高田市などです。創業は大正15年(1926年)で、気仙沼の乾物屋さんとお医者さんが「自分たちの金融機関が必要だ」と組合を作ったのが始まりです。最初の事務所は組合長の自宅だったそうですから(笑)、この時点からすでに地域密着型だったんですね。
そもそも、銀行と信用金庫では同じ金融機関とは言え、「誰の利益を優先するか?」という点において、前者は株主、後者は地元の繁栄、といった大きな違いがあります。さらに信用金庫にとって重要なのは相互扶助の経営理念です。地域みんなで助け合ってより良くなろうという考え方ですね。このためにはやはり「徹底した地域密着型」であらねばなりません。震災直後、カードや通帳はおろか、身分証明まで失っていても、お客様への現金引き渡しが可能だったのは、担当者がお客様のお顔を認証できたからです。足で稼ぐきめ細やかな営業の蓄積が役に立ちました。
一般的に信用金庫の柱となる業務は、融資、預金、為替の3つです。当金庫の場合は特殊と言ってもよいでしょう、この他もう1つ大きな業務が追加されています。震災後の復興への取り組みです。極端に言うと、1つの街が無くなってしまったわけです。ここに再び街を興すという仕事は、或る意味で誰もやったことのない仕事に挑むということですね。
震災から7年が経ち、以前とは違った課題が生まれています。単純に町工場を再稼働させればよい、という段階は過ぎました。これからは、観光、企業、行政などを取りまとめるような役割も果たさなければと考えています。おせっかいの領域が広がったとでも言いましょうか(笑)。当金庫も地元企業の1つですから、地元が栄えて経済が循環しないと私たちも成り立たないですし、それこそ支えつつ支えられつつ、地元の発展のために努めて行きたいと考えています。

地域の新規事業創出のプロジェクトについて検討を重ねる。
「こういうサポートの形はどう思います?」

本店のテラー(受付担当)は3名とも地元出身で震災後の入社。
「地元で地元のために働けて、嬉しく思っています」

平成29年(2017年)3月に新築開店した本店。
それまでは被災した旧店舗で営業し、現在その場所は駐車場に。